7.2
意味相互互換
行政管理予算局(OMB : Office of Management and
Budget)は、連邦政
府全体に於けるビジネスプロセスと情報技術との統一及び簡素化の指示と指導の呼びかけとを行った。これを達成する為には、各機関は、各機関が持つ情報を連
邦政府内で共有できる様になっていなければならない。しかし、各機関が共に働く環境には、多種多様な用語や定義があるので、この情報共有の為には、異なる
文脈の中のデータの意味を理解できる必要がある。セマンティック技術は、分散データを結び付ける事や文脈依存の中でデータを記述する為のフレームワークを
提供する事でこの問題を解決できる。
公式な説明では、セマンティック技術は交換されてい
る情報の論理的性質や文脈を記述する事ができ、且つ、通信者間の最大限の独立性を保証し得ると言う。その結果、ビジネスロジック、プロセス及びワークフ
ローに関係無く情報ドメイン間の高度な透明性やよりダイナミックな通信が可能となる。(Pollock and Hodgson, 2004)
その技術構想は、柔軟でないプログラム又はコードで
無い柔軟な情報モデルを実現する事であり、膨大な量のミッションクリティカルなデータの共有の為の動的且つ自己修復できる新たな基盤を実現するのに用いる
事である。タクソノミ技術やシソーラス技術や文脈モデル化アプローチ技術や推論技術やオントロジドリブンの相互互換技術の最近の進歩により、それらの技術
を、複数の知識コミュニティに分散している情報の分散管理方式の動的変化に対応するフレームワークに適用できる様になった。(Pollock and Hodgson, 2004)
NASAは、意味相互互換技術を特定の形式或いは語彙の標準
化や唯一つのモデルに準拠する中核データベースを作る事無く総ての関係者に必要な情報を共有させるのに極めて有望な技術と見ている。一つの例として、NASAは、スペースシャトルに於ける配線劣化システムに関
する重要且つ稼動中の保守問題に対処するのに、この概念を使用している。既存の配線システムデータベースは、部品の仕様、伝票、設計図、注文変更、標準手
順、テスト手順、テスト報告書、調査報告書、故障原因と報告情報、作業依頼及び修復処理文書に関する情報を含んでいる。数十の雑多なデータベース(技術的作業を支援する)と雑多なシステム(設計作業を支援する)とが、スペースシャトルプログラムを支援している幾
つかの契約企業間に分散したデータを処理する為にNASAの中で使われている。配線問題の処理には、沢山の組
織横断システム、データベース及び知識リポジトリにタイムリーにアクセスする事が必要であり、その範囲は広大である。フライト異常時の診断やトラブル処理
は、特にクリティカルであり、タイムリーな解決はミッションクリティカルと言うだけでなく命に関わる問題でもある。多くの関係者が必要なデータにアクセス
し易くし、且つ、より有用なデータとする為の作業は、未だ、始まったばかりであるが、この章の最初の方で強調した様にセマンティック技術は、既存のデータ
統合アプローチでは解くことのできない問題の多くを処理する為の有望な方法の一つであると言われている。
その様なプロジェクトで如何にセマンティック技術を
活用できるか要点を以下に述べる。
設計時ツールは、或る特殊な領域を含むRDF及びOWLモデルの開発に用いられる。これ等のモデルは、既存
のXML標準か他の方法で定義されたものに基づいているかも
知れない。そして、他の設計時ツールを、特定のデータ表現からこれ等のモデルに柔軟にマップするのに使う事で、或るデータ標準にコンバートするアプリケー
ションをわざわざ作る必要性を無くする。故に、実行時処理は、これ等のモデルを使う事で、ソースからターゲットへデータの形式変換を行ったり、又は、独自
の問い合わせステートメントを連携用問い合わせとして実行したりする中心軸に変換できる。このタイプの意味相互互換フレームワークは、構文、構造及び意味
の差異をよりうまく解決する為の堅固な基盤を提供可能であり、将来、色々な組織が、現状の操作メソッドを変更する事無くデータを共有したり相互連携したり
する事を可能にする道を拓くであろう。
意味相互互換アプローチの重要な利点の一つは、既存
の統合技術やデータベースやソフトウェアアプリケーションを置換する必要が無い事である。種々のセマンティックベースのコンポーネントとアプリケーション
インターフェース(APIs)とから構成されるセマンティックフレームワークは、Webサービス若しくは伝統的なミドルウェアAPIsと共に配備する事ができ、既存の基盤投資を強化でき
る。その様な場合でも、仮想的な集中問い合わせや変換やビジネス規則メタデータにより大きな利益を得る事ができる。そのビジネス規則メタデータはネット
ワーク基盤のパイプを流れる事が出来る。同様に、そのソフトウェアは、設置作業の少なさ、コーディングの最小化及び最大限の再利用性により、顧客の既存ITエコシステムに適合する事ができるであろう。(Pollock and Hodgson, 2004)