3.1
何がセマンティックWebであり、何がセマンティックWebでないか
1.セマンティックWebは新しいものではな
く、また、別のウェブサイトの集合でもない。
セマンティックWebは、現在のWorld Wide Webの拡張(発展形)であり、新しい別のウェブサイトの集合ではない。セ
マンティックWebは、現在のWorld Wide Webの機構とトポロジとの上に構築されており、より豊富
な意味の関係を表す為の標準と機械処理可能なデータとを定義することにより、より高い能力を実現している。検索エンジンやスパイダサーチ技術や解析スクリ
プトのような外部処理がより容易にアクセスできるようにする為にウェブページに情報を記述するのに、既存のサイトはこれらの仕組みを利用するかも知れな
い。さらに、新しいデータ格納機構(多くのデータベースを含むが)がマシン処理をしたり、されたりする事が可能にな
り、種々の構文、構造および意味を統合した質問や結果を生成する様に高度化出来る。セマンティックWebで使われるプロトコルは、現在のWorld Wide Webを実現している既存の色々な技術に対して透過な手段
である。
2.セマンティックWebは人間からのアクセ
スだけを考えて作られたものではない。
現在のWebは、非常に粗雑なレベルの情報を構造化し相互結合す
る為のテキストマークアップとリンクプロトコルとに本質的に関連している。そのプロトコルは主として、人間が利用するのに適した形式で文書を記述したりリ
ンクしたりするために使用される(しかし、それは基本的な機械検索と収集とに対する有用な手掛かりとなっている)。セマンティックWebのプロトコルは、より洗練されたレベルで情報を定義
し結合している。意味が機械により、容易に理解や処理し易い形式で記述される事により、データ格納機構間の構造や意味の違いを超えてブリッジ可能となる。
この抽象化とアクセス性の増大は、現在のWeb能力が増し、また、拡張される事を意味している−そ
して、新しく強力なものになるであろう。
3.セマンティックWebは、急進的な未実証
の情報理論の上に構築されたものではない。
セマンティックWebの出現は、広く認知された情報理論の中の自然な成り
行きであり、その情報理論は、知識表現や知識管理からのコンセプトとWorld Wide Webコミュニティおける改訂構想に起因するコンセプトと
を借用しているものである。新たに承認されたプロトコルは、コンピュータ言語、情報理論、データベース管理、モデル指向の設計技法及び論理学における多く
の熟達した人々のアイデアを数年にわたって具体化したものである。これらのコンセプトは、多くの現実世界の場面で実証がなされているものであり、W3Cの統一的な標準は、企業の中やWeb上で広く採用され、また、その利用が加速する事を約
束している。
知識表現上の問題と未だ実現されてない構想に関し
て、歴史を振り返ると、あるコンセプトが受け入れられる為には、大勢を決定付けるのに統一的な標準が必要である事を多くの例が示している。HTMLはSGMLから派生したものであり、唯一のある程度普及したテ
キストマークアップ言語であるが、まだ情報技術の利用において大変化をもたらすに至っていない。この分野の多くは、オブジェクト指向プログラミングと物理
概念プログラミングモデル(conceptual-to-physical
programming models)とが受け入れられるのに長い時間を要した事を示して
いる。Ralph Hodgsonによれば、“知識表現は基盤的学問分野であり、現在それは、研究
所内から現実世界の利用へ移す為に必要なインフラとサポート標準のセットを有している”。
4.セマンティックWebは現在のデータモデ
リングの概念から大きく逸脱するものではない。
Tim Berners-Leeによると、セマンティックWebのデータモデルは関係データベースモデルと似てい
る。“関係データベースは列もしくはレコードから構成され
る表である。各レコードはフィールドの集合から成っている。RDFがプロパティ値間のコネクションだけの様にそのレ
コードはフィールドのみからなる。その間のマッピングは大変容易であり、一つのレコードはRDFの一つのノードとなり、フィールド(カラム)名はRDFのプロパティタイプとなり、且つ、レコードフィール
ド(テーブルセル)は一つの値となる。実際、セマンティックWebの主たるドライビングフォースの一つは、マシン処理
可能な方法で関係データベースの膨大な情報をウェブ上で表現する事である”(Berners-Lee,1998) セマンティックWebがより高い表現力を持ち、包括的で、また、データモ
デリングの強力な形式を有する事を意味し、それは伝統的なデータモデリング技法(実体関連モデル[ERモデル]等)の上に構築され、より厳密に理解可能な方法で色々な
関係を表現する為のより強力な方式にそれらを転換する。
5.セマンティックWebは人工知能(AI)を用いた魔法ではな
い。
機械が解読可能な文書というコンセプトは、人間がも
ごもごと話す事を機械に理解可能にさせる魔法のような人工知能を意味するものではない。それはただ、実在する良く定義されたデータを用いて良く定義された
操作を行なう事により、良く定義された問題を解く機械の機能を示しているに過ぎない。(Berners-Lee, Handler, and Lassila, 2001) 現在の検索エンジンは20年前には魔法の様に見られた機能を実行している、そ
して我々は、IPプロトコル,HTML,ウェブサイトの概念、ウェブページ、リンク、画像対
応ブラウザ、革新的検索、ランキングアルゴリズムそして勿論非常に多くの信じ難いほどの高速なサーバと巨大で高速のディスクストーレジアレイ等も同じ様に
認識している。セマンティックWebの機能も、標準とアプローチとの共通の基盤の上に構
築された知識表現と情報技術とにおける継続的な進化の論理的な結果と同様なものとなるであろう。
6.セマンティックWebの利用可能な実物は
未だ存在しない。
現在セマンティックWebは、有望的かつ魅惑的なものだが、一つのビジョンで
ある。現在のWebと同様に、セマンティックWebは、オープンな標準と固有のプロトコル、フレーム
ワーク、技術及びサービスの組み合わせにより形成されるであろう。W3Cが承認した標準であるXML、RDF及びOWLはセマンティックWebの基本プロトコルを構成する。これらの新しいプロト
コルを使って構築された新しいデータスキーマや連携メカニズムは、同じ興味や産業や目的のコミュニティの周辺で開発され、それらの内のあるものは、熟練し
たデータアーキテクトによって注意深く設計され、そして、権威ある標準化機関により公式なものと承認され、またあるものは、どこからともなく現れて、突然
広く受け入れられるであろう。新技術や新サービスの採用は、意味を意識したコンテンツ発信ツール、コンテンツモデル化ツール、仲介し推論する評判の良いエ
ンジン、データの浄化やシソーラスサービス、新しい監査及び検証コンポーネントなどで行われるであろう。しかし、セマンティックWebのビジョンの色々な要素は既に存在しているが、これ
等の技術の拡散や競合機能との調整やそのビジョンを全体的にカバーするには数年を要するであろう。