6.7
推論エンジン(Inference Engines)
推論エンジン(時々、リーズナ(reasoners)と呼ばれる)は、既存の情報から新たな事実や関係を導き出すソフトウェアツールである。推論エンジンは、推理によってある結果に到達する人間の能力を模倣しているとしばしば言われる。実際には、推論とは、神秘的な人工知能の能力などではなく、むしろ、データ処理における極めて普通のアプローチである。複雑なデータマイニングを行なう事は、推論の1つの形と考えることができる。情報と関係とのモデルを作ることによって、推論エンジンは、そのモデルに基づく論理的結果を導き出す事ができるようになる。推論の良くある例として、人々や他の人々との関係のモデルを用いる事で、新しい知識を得る事がある。この種のネットワークグラフ(モデル)の探求は、明示的に定義されていなかった関係を知る事を可能にするであろう。
RDFとOWLとを用いた推論は、該当するモデルの中に表現された関係に限定されていること(主に、遷移的関連を推論する手段であること)に注意されたい。しかし、ルール言語やロジック言語を付け加える事により、概念理解、学習及び適応に於ける大いなる飛躍を行うことが可能であるが、しかし、この種の能力の実装事例は未だ少なく、実現からは程遠い。
フリーや商用の推論エンジンが幾つか存在する。例えば、Jenaは、HPの研究所で開発されたセマンティックWebアプリケーションを開発する為のオープンソースのJavaフレームワークであり、推論エンジンサブシステムを有している。Jenaの推論エンジンは、OWL FullのサブセットであるOWL Lite用及びRDFS用のルール集合と一緒に構成された推論エンジンをベースとする汎用のルールを有している。JESSは、カーネギーメロン大学で開発されたポピュラーなOWL推論エンジンである。また、Network Inference社は、記述論理(OWL-DL)に基づく商用の推論エンジンを提供している。