2.3 セマンティック技術の主な機能

幸運にも、丁度インターネットやWorld Wide Webのプロトコルが人間の(利用の)為に、膨大な情報を結び付ける手助けをしたように、今度はマシン操作やマシン処理の為に同等かそれ以上の情報を結び付ける新しいアプローチが現れつつある。これらの技術革新は情報の相互互換を簡単にし、企業内やWorld Wide Webでのよりよい情報連携と信頼性とを提供する。徐々にこの技術革新は、新しい知的仲介機能や収集された情報のフィールドに跨った知的推論機能への道を拓くであろう。図2にセマンティックコンピューティングの主要能力とステークフォルダに及ぼす影響とを示す。


能力

狙い

ステークフォルダ

影響

もたらすもの

短期

 

 

 

 

セマンティックWebサービス

柔軟なサービス検索、サービス発見及びスキーマ変換

システム開発者及びシステムインテグレータ

Webサービスの付加と配備に於ける摩擦の軽減

より自動化された柔軟なデータの連携

情報統合及び/または相互互換

情報統合数をn2 個からn個へ削減

データ及びメタデータアーキテクト

ヘテロなデータソースを統合するコストの削減

素早い相互互換性の増大とコスト削減

知的検索

文脈を踏まえた検索、概念問合せ及び利用者フィルタリング

ビジネス及び技術管理者、アナリスト及び個人

検索結果の人間フィルタリングの減少、より意味のある検索

検索精度の向上はより高い生産性をもたらす。

 

能力

狙い

ステークフォルダ

影響

もたらすもの

長期

 

 

 

 

モデルドリブンアプリケーション

アクショナブルモデルからドメインロジックを処理する事を可能にする。

ソフトウェア開発者

ドメインロジックの素早い変更とコーディングの削減

コードメンテの減少と要求に対する迅速な変更

アダプティブ及び自動コンピューティング

診断アプリケーション及び予測システム管理に必要な機能の提供

システム管理者

複雑なシステムの自己診断とプランニングによる信頼性向上、コスト削減

システム保守及び人間の介入を少なくする事によるコスト低減

知的推論

豊富なデータと進化可能なスキーマとに基づく機械推論のサポート

アプリケーション及びコグニティブエージェント

埋め込みロジックに対する要求の削減とドメインモデルから制約の分離

アプリケーション開発コストの低減

2: コンピューティング能力の調査

(Richard Murphyによる)

 

最近、W3Cで承認された二つの新しいデータと論理構造は、情報をより豊富にし、より自律処理可能にし、そして最終的には、さらによりアクセスしやすく且つ利用しやすくすることを可能にしている。

この新たな構成要素Resource Description Framework (RDF)Web Ontology Language (OWL)−は、既存のW3Cのマークアップランゲージと互換性を持たせつつ機能を付加し、知識表現規則の為の利用拡張を行っている。 RDFはデータ間の関係を確立する為のフレームワークを提供し、一方、OWLRDFを拡張して、異なったデータ要素間の特別な制約や他のデータとの関係を指定する事を可能にしている。 これらの標準(その標準を支えるために作られた新しいツールや基盤要素を含む)は、企業内のアダプティブコンピューティングの開発を牽引するだけでなく次世代のウェブの発展をも牽引し、セマンティックWebと呼ばれる

 

セマンティックWebのビジョンは、インターネット上の転送情報やアクセス情報に良く定義された意味を付加する事により現在のウェブを拡張する事である。従って、コンピュータは、データが高度に関連した情報や知識になる様に、必要なデータ処理や組み立て処理をより多く出来るようになる。言い換えると、セマンティックWebの独創的な点は、データの関係とカテゴライズとを改善する為に必要なプロトコルと技術とを確立している事であり、それにより、異なったシステム間やデータ間の関係を生成したり推論をしたりする能力を強化している。

 

例えば、図書館員に南北戦争当時のゲティスバーグの地図を要求すると、おそらくその時代の地図を含んだ本が出てくるだろう。しかし、検索エンジンで検索すると、「ゲティスバーグの地図」と言うテキスト情報を含む多くの結果を得られるであろう。しかし、これらの結果には実際の地図を含んでいるかもしれないし、そうでないかもしれない。加えて、検索文字列の中に指定された日付の形式と一致していない引用資料は得られないかも知れない。

同様に、ワシントンDC地区のネットワークセキュリティイベントについての検索を行った場合、バージニア州(VA)McLeanで行われたアンチスパムメールに関する講演は得る事ができない。 何故なら、ネットワークセキュリティとアンチスパムメールの間の関係とワシントンDC地区在るバージニア州(VA)McLeanの概念とは、World Wide Webの領域の中では、まだ基本的に結び付けられていないからである。W3Cによる取り組みは、この様なデータの関連性と集合全体の理解とのギャップを埋めることを目指している。

 

XMLXMLに関連して開発されたデータ記法とを基盤としているRDFOWLとは、ウェブの諸々のツールやWorld Wide Webの中に組み入れられ始めている。図3は、W3Cのどの標準が構文、構造及びデータや情報の意味記述に対応しており、そして、どの様にセマンティックコンピューティングのスペクトラムをカバーしているか示している。

3: セマンティックコンピューティングの三つの次元

(Richard Murphyにより、Daconta, Obrst, Smith 2003から引用)

 

これらのデータと論理構造の定義に加え、W3Cは既存アプリケーションやデータセットと連携したセマンティックソリューションを実装する為に必要とされる基礎的なアーキテクチャと論理とを定義している。多くの会社が既にセマンティックアプローチとセマンティックWebのビジョンを採用しており、さらにその分野を発展させる技術戦略を積極的に追及している。(Pollock and Hodgson,2004

これらの技術やアプローチは、先進的な利用者に使われつつあり、そして、その様な利用者は増えつつある。初期のアプリケーション開発事例は、徐々に実装可能である事や投資収益率(ROI)が期待に沿うものである事をはっきり証明している。いくつかの政府機関では、W3Cのこれ等の新しい標準を用いて対象領域を絞った挑戦的な複雑問題を扱うパイロットプログラムを計画したり実行に着手したりしている。本白書とセットになっている他の報告書にこれらの機関とプログラムに関する詳細が紹介されている。

 

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