2.1
企業内に於ける意味矛盾
組織に於けるITシステムに内在する構造的違いや文化的違いは、その独自のミッション、階層、語彙、作業手順及び作業形態を反映している。 あるシステムでは”価格”とされているものが他のシステムでは”コスト”となっていたり、大尉の事を陸軍では”キャプテン”と呼び、海軍では”ルーテナント”と呼び、海軍の”キャプテン”は陸軍の大佐(コロネル)に対応している。(この種の違いは、軍事関係に留まらず、多くの州警察組織は海兵隊をモデルにした階級を使っており、多くの公衆衛生局は海軍をモデルにした階級制度を用い、多くの警察や調査部門は独自の命令構造を有している。) 同様に、法執行組織に於ける”情報提供者”を諜報機関では”情報源”と言う用語で呼ばれるかも知れない。(後者は人間以外のソースを含む可能性がある。) これ等は名称付けにおける比較的簡単な違いの例である。
より複雑且つ抽象的な概念のものがあり、それらは、構文や構造の違いであり、より重大なものに意味の違うものがある。 システム開発者及び(/また)情報モデラに関係する問題に名前の違いが概念の違いに起因するものか、意味の違いに起因するものか決めなければならない問題がある。 名前の違いは、ルックアップテーブルやシソーリ等の既存のツールを用いて比較的簡単に処理する事ができるが、概念の違いや定義の違いの場合は、その意味のより深い洞察が必要である。
例えば、異なるシステムが異なる概念またはバリーチェインに於ける異なるステージを示すのに同一の用語を用いる事がある。 多くのシステムでは”コスト”と言う用語は、消費者が購入する場合の”価格”を示し、同時に、他のシステムの中で用いられる用語”コスト”は、サプライヤが卸売業者にある品物を販売する場合の”価格”を指し示している事がある。
意味は時間と共に変化するものもある。 個人的な変化、組織の履歴、組織の方針/文化及び法人運営の為の命令などが時間と共に意味の変更を来たす契機と成り得る。(そのような変化が生じる事を明示する事無く使われている。) この様な複雑な矛盾に対処する為には、より大規模なセマンティックベースのソリューションを必要とする。
図1は色々なデータセットを連携させた場合に於ける意味矛盾の二つの例を示している。
(付録Cには意味矛盾の表がある。)
この様な矛盾は複数のデータセットを連携させる場合に通常存在し、多くの場合、別々の開発、ニーズの変更、組織や構造の違い等々に起因してデータモデリングの副産物として発生する。
データ収集に於ける矛盾 - 構造の違い
値表現の矛盾
図1 意味矛盾のタイプ
(Pollock and Hodgson,2004より引用)
構文的、構造的及び意味的な矛盾問題は、企業及び政府機関の両方の中で大きな問題になって来ている。
メッセージングや転送ソリューションは益々一般化し商品化され、XMLがデータ交換の為の基本構築要素となっており、これらは部分的に完璧な為、多くのものが容易に実現可能な様に見える。更なる技術が、組織と個人的意図との間の処理と情報セットを、点から点への個別データや用語のマッピングや同時プロセスなどを必要としないで効率的かつ合理的に処理する為に必要とされる。セマンティック技術で実現を保証しているものに論理的な言語を使える事がある。
それにより、より明確にデータの意味と構造とを明らかにする事ができるので、用語や定義に違いや矛盾があっても、ソフトウェアがうまく処理できるようになる。